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ゆさゆさと揺れてる。揺さぶられてる。
「……ん」
身体が大きく揺れて、気持ちよさに漂う泉の思考も大きく揺れる。
「――……くん」
「ん……」
大きく揺すられて「んんー」と泉は声を上げた。
「気持ちよさそうに……」
そうだ、気持ちいい――。
「寝てるところ悪いけど。起きて! 早川くん!」
ひときわ大きく揺すられてパッと泉は目を開けた。
心地いい眠りの中から一気に起こされた意識。視界に眩しい日の光が入ってきて逆光の中泉を見下ろしている涼介が映る。
スーツ姿じゃないラフなスエットを着た涼介に泉は何度も目を瞬かせた。
「おはよ、早川くん。寝つきは恐ろしくいいけど寝起きはすごく悪いんだね」
見慣れない天井。そして部屋。そうだ、部屋だった。
明らかにベッドに寝ている。昨日、涼介と飲みに行ったはずだ。
だが途中で記憶が途切れている。
ベッドとチェスト、パソコンラック――。見知らぬ部屋。その中に時計を見つけ6時半だと知る。夜のわけがない。当然朝だ。
「きのうのこと覚えてない? 俺のペースで酒飲ませてたのが悪かったのかな、ごめんね、突然途中で寝ちゃったんだよ。家知らないから俺の家に連れて来たんだ。もっと寝せてあげててもよかったんだけど今日のシフト知らないし俺も仕事だから」
理解するにつれて青ざめ泉は跳ね起きた。
「す、すみません!」
「ううん。こっちこそそんなに飲めないって言ってたのに俺のペースで酒進めてごめんね。それに服も着替えさせてあげられなかったし」
「へ? いや、全然! 大丈夫です!」
見下ろせば確かにきのう来ていたデニムとティシャツのままだ。
皺になってるが気にすることでもない。
「二日酔いは?」
「へ、平気です!」
「そう。よかった。朝食用意してるから顔洗ってきて」
「は、はい!」
泉に洗面所の場所を案内してもらって慌ただしく顔を洗う。
涼介の家は1LDKのようだった。泉が住む1DKのコーポよりも綺麗で広い。寝室も整理整頓されてたし、バスルームも広そうだ。
10畳ほどはありそうなリビングに入るとダイニングテーブルでコーヒーを飲んでいる涼介が軽く手を上げた。
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