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「大したものじゃないけど、どーぞ」
テーブルにはフレンチトーストとサラダ、フルーツヨーグルトが並んでいる。
呆気にとられながら泉は席に着き手を合わせた。
「ありがとうございます。いただきます……。あの、これ八木さんが作ったんですか?」
「うん。そーだよ。一人ぐらいして長いし、このくらいたいしたことないよ。それに俺朝食はきっちりとらないといやなんだよね」
「すげー。俺トーストくらいしか」
「早川くんも一人暮らしじゃなかったっけ」
「そうなんですけど。自炊……全然上達しなくって」
涼介の作ったフレンチトーストはチーズとハムが挟んであっておいしさに泉はまた驚いた。
「すっげ、うまい」
「そ? よかった」
料理上手でいいところに住んでいて性格もいい。
涼介は絶対にモテるな、と改めて涼介を見直す泉。
フレッシュフルーツが入ったヨーグルトも美味しくてぺろりと食べてしまう。
「早川くん今日のシフトは?」
「今日は昼からなんです。一旦家帰ってから行きます」
「そっか。よかった。じゃ一緒に出ようか」
「はい!」
食べながらきのうの居酒屋でのことをいろいろと思い出しかけるがいまはやめておこう
無意識に泉は考えないようにし朝食を味わった。
インスタントコーヒーじゃないらしいコーヒーも美味しく、日ごろの泉にはありえないゆったりとした朝の時間だ。
「ごちそうさま」
「ごちそうさまでした!」
空になった食器をキッチンへ運んでいく。キッチンもきれいにされている。
泉が使わないような調味料などが並んでいてちゃんと自炊してるんだなと改めて尊敬してしまう。
「八木さん、俺が洗います! 迷惑かけちゃったし。出勤の準備してください」
「そう? ありがと」
食器の量なんてたいしたものじゃない。
料理は下手な泉だが洗い物くらいは普通にできる。手早く片付け終えたところで涼介がキッチンへ戻って来た。
「泉くん」
ワイシャツにネクタイを通しながら涼介が泉を呼んで、「終わりました」と返事をしつつも違和感を覚えた。
「泉くん、って呼んでいい?」
ネクタイを締めながら涼介が笑いかけて泉のそばに立つ。
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