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大きなため息がもれる。10分ほどの通話だったがひどく疲れた。
「結局俺のファーストキス……奪われ損か……」
キスくらいで……。
そう何度も思ったけれど――。
「ファーストキス……。べつに、どうせ店長とキスできるわけじゃないし!」
声に出して胸にひっそりあったモヤモヤを口に出してみると、部屋に自分ひとりだというのに恥ずかしくて身悶えてしまう。
「あー……。キスしちゃったのか、俺」
キス、キス。
キスくらい――だけど、やっぱりちょっと哀しくて涼介を恨めしく思いつつ、泉はそっと唇に触れキスというものを思い返していた。
もしあれが店長だったら――。
不意に浮かんだ考えに慌てて上半身を起こし、頬を叩いた。
「変な想像しない!」
店長はノンケなんだから!
だけれど一度想像してしまった光景はなかなか頭から離れずバタバタと悶えたのだった。
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