1.初恋してしまいました。

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「お前が担当しているのは半分くらいは早川くんが受け持つことになる」  急に自分の名前が出てきて泉は目を瞬かせて一貴を見上げる。すぐにそれに気づいたように一貴が顔を向け微笑した。 「そのうち発注もしてもらうことになる。ちゃんと教えていくから安心してくれ」 「は、はい」 「それじゃあ新商品の売り込みは早川さんにすればいいんですね」 「売れそうにないものは遠慮なく断っていいから」 「ひど! 全部自信のある商品ばっかりですよ、うちが取り扱ってるのは!」  ふたりの仲の良さに自然と笑っていた泉は不意に涼介から真剣な眼差しを向けられてどきりとした。なんだろう、とそわそわしたのはほんの数秒ですぐににっこりと涼介が笑顔を浮かべ泉の手を取った。 「早川さん、ぜひうちの商品をよろしくお願いしますね」 「……へ、あ、はい」  俺、ただのバイトだけどいいのかな。  だが一貴はとくに何も言ってこないので涼介はこちらこそよろしくお願いします、と軽く頭を下げた。 「それよりお前、今日仕事だったのか?」 「午後から休日出勤です。もう仕事は終わってるんですけどね。ここに来たのは先輩に挨拶しておこうと思っただけなんで。そうだ、仕事9時までですよね。飯行きませんか。久しぶりに」 「……んー」 「どうせコンビニ飯買って帰るくらいでしょ」  一貴と夕食、羨ましい。  ぼうっと見ていると「早川さんも一緒にどうですか」と誘われた。 「そうだな。早川くんも一緒に行くか」  迷っていた様子の一貴も誘ってくるので泉は目を泳がせる。  行きたいけどお邪魔じゃないのか。というより目下節約生活中の貧乏な俺の予算で社会人の二人に着いていけるのか?  激しく迷う泉の口が魚のように開閉する。  ブッと吹き出したのは涼介で泉がぽかんとするとすぐに「すみません」と謝ってきた。 「すごく悩んでるようだったから。心配しなくても高級レストランなんて行きませんよ。僕も給料日前だしファミレスでも行きましょう」  ね、と言われれば断るのも微妙で泉は頷いた。  それから涼介は売り場のレイアウトなどを見て回ると一足先に店を出て行った。  泉たちはレジ閉めをして、涼介と合流したのは9時20分ごろだった。 ***
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