プロローグ

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痛い。 先程腹を強く殴られたせいで、息するだけでも腹部に痛みが走る。震える手で顔を覆えば、ぬるりとした感触。ああ、鼻血でも出ているんだろうな、という考えは、離れたところで聞こえた、うぐっ、という声でさっぱり綺麗に無くなった。 少年は、動かすだけで痛みが走る体を、仰向けからうつ伏せになり、顔を上げれば、もう一人の少年が一人の男に蹴られていた。 「け、けんしんっ……!」 「はいはーい、人の心配してる暇あるのかなー?」 『謙心』と、呼んだ少年に向かって弱々しく伸ばした手を、またある一人の男に踏み潰され、口からは何ともみっともない声が発せられた。 周りにいるのは『謙心』だけじゃない。 また、もう一人の少年も、仰向けの状態で腹の上にどかりと男に座られているため、いつも明るく笑っている口も今では閉ざされて歪められている。 さらに、もう一人の少年は、助けなきゃ、と、口にして彼の傍に行こうとしているが、体が痛んでそれを行う事が出来ていない。動かすこと出来ても、傍にいる男等によってそれは出来ないだろう。 四人とも、もう体はボロボロだ。 その原因を作ったのは、この周りにいる十数人の男達だ。
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