君の思い出《アルバム》には載りたくない

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    *    *    *  料理男子の達也が夕食を作っている間、あたしは寝室に積み上げられた、捨てる本を物色し始めた。でも闇雲に山を崩したりせずに、記憶した色と厚さを頼りに、じっくりと背表紙を眺める。  ……あった。これだ。あたしは一冊の青い背表紙の分厚い本を抜き出す。 「あれ」  それは、本ではなかった。 「アルバム……?」  良心がチクリと痛む。勝手に達也のプライバシーを見ても良いものかしら。でも、好奇心は抑えられない。  一ページ目を開くと、『達也一歳』と書かれた、コロコロとした赤ん坊の写真があった。 「わあ……達也、可愛い」  こんな写真を捨てちゃうなんて、勿体ない! あたしはその写真をシートから抜き取った。だけど、二ページ目。 「ん!?」  可愛い達也の成長が見られるかと期待してめくったページは、様々な女性と達也が一緒に写った自撮り写真に埋め尽くされていた。真っ赤な口紅のお姉様から、ピンクのチークのうぶなコまで。  だから……隠したのね、達也。あたしが入社する前、達也がお盛んだったのは知っていたけど、こうして証拠を突きつけられると胸が痛い。 「美羽(みわ)、飯出来たぞ」 「う、うん」     *    *    * 「助かった、美羽。俺一人じゃ、ぜってぇ大掃除しねぇからな」  お礼に、少し奮発して良い肉のサーロインステーキが食卓に並ぶ。達也は朗らかに話すけど、あたしは一つの考えで頭の中がいっぱいだった。 「……ん? どうした、美羽」  あたしは思い切って訊く。 「達也……今まで、何人くらいの女性と付き合ったの?」 「え?」  達也は目を丸くしたけど、慌てず騒がず優しい笑みを見せて、立ち上がってテーブル越しにあたしの額に口付けた。 「お前が初めてだけど?」 「え……どういう意味?」 「そのままの意味だ。付き合ったのは、お前が初めてだ」 「えっ……」  思いもかけない言葉に、頬に熱が上る。じゃあ、あの写真は、コレクションみたいなもの? 「ちなみに惚れたのも、お前が初めてだ」  達也がやに下がった顔で言うから、あたしはますます赤くなっちゃった。
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