君の思い出《アルバム》には載りたくない

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 気が付けばもう師走。早いものね。  あたしは達也(たつや)の家の大掃除を、手伝いに来ていた。  何しろ達也ったら、大掃除を一度もした事がないとか言うんだもの。年末になったら忙しくなるから、今の内に片付けてしまおうとあたしが提案したのだった。 「うわ」  カラーボックスを移動させると、裏側に落ちたピアスやリングや綿埃が一緒くたになって現れる。  よくこんな部屋で暮らせるわね……。あたしは呆れながら、こまごまとしたアクセサリーを拾って埃を払う。 「……ん?」  達也はシンプルなシルバーのピアスが多かったけど、中に一つ、真っ赤なサクランボのピアスがあった。  これは、どう見ても女性ものね。あたしは見なかったフリをして、それをゴミ箱に直行させる。 「……達也?」  ふと、寝室が静まり返っているのが気になった。さっきまで、本棚を片付けるガタガタという音がしていたのに。  崩れてきた本の、下敷きになってるんじゃないかしら。あたしは心配になって、覗きにいった。 「達也……」  あたしが声をかけると、達也は慌てて、開いていた大きな本を閉じて後ろに追いやった。 「ん!? 何だ!?」  不必要に大きな声。よっぽど誤魔化したいものらしいわね。あたしは敢えて触れず、その本の外装だけを記憶に留めた。 「静かになったから、心配になって」 「あ、ああ。大丈夫だ。昔買った漫画に、つい見入っちまって」  嘘ね。達也は嘘を吐く時、右目の下が僅かにだけど痙攣する。無修正のエッチな本でも隠してるのかしら。  その後は順調に掃除とゴミの分別を済ませ、達也の部屋は随分サッパリとしたのだった。
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