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玲音が下車すると、翔太の嫌な予感は的中、待ってましたとばかりに運転手が話しかけてきた。 「今のお客さん、アイドルの人でしょ? なんだっけ、女の子に人気のグループの」 翔太が黙っていると、運転手は調子良く続けてくる。 「今流行りの、男の娘っていうの? いやぁ、ほんとに綺麗な子だねぇ。女の子にしか見えないよね、あれでホントに男なの!?」 「あいつは、そんなんじゃない」 翔太が小さな声で呟くと、運転手は屈託ない様子で、何ですか? と聞いてきた。 「降りるから停めてくれますか」 翔太はそれだけを絞り出すように言うと、空いた扉から勢いよく飛び出した。運転手が何か声を掛けてきたが、振り返らずにそのまま身を隠すよう、雑踏に紛れた。
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