ええ?これから帰るに決まってるだろ!

3/5
509人が本棚に入れています
本棚に追加
/76ページ
 通路の奥の大きな窓。あれがいい。割っては目立ち過ぎる。開いている窓はあそこか。方角を決めてすいすいと進む。そして勢いよく窓から外に跳躍した。  おぉぉぉ!?  ぎゅむと髪を引く力が強まった。飛び出た窓は思いの外高さがあった。ヒューっと落下してるのがわかる。ただ落ちていた。どうやら予想以上の高さがあったようだ。  俺は猫じゃないし魔法も知らない。プーのフォローも期待しないしどうにもならない。だが力ある魔獣で魔狼だからこうしよう。  冷静に落ちるがまま落下した魔狼は、魔力を下肢に集中させて少し動かし空を切ると落下速度が落ち、足から音もなく着地した。 「はあぁ、何とかなった」  プーが頭を撫で撫でしていた。周囲を見渡すとここは丁度城の裏側なのか低めの壁に下り階段がみえた。見上げると聳え立つ城。よし出れた。一刻も早く離れよう。  魔狼は闇夜に紛れ階段を抜け、城壁を幾つもこえ城下の屋根を蹴り空を切り疾走する。澄んだ空気と夜風に新緑の香りを感じ自然と目的地が定まる。  この町を抜けて森か林で一休みしてから次を考える。それでいい。 「プー、いい時に出てきたな。感謝する」  人化のままで走る魔狼に振り落とされない様しっかり頭を抱え込むプーは、顎を使いうにうにして返事を返す。     
/76ページ

最初のコメントを投稿しよう!