あたらしい召喚

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促す声を無視して改めて己の足下と周りを見遣る。大きな切り出し岩を並べた地上より一段高い祭壇と思しき石畳に立っていた。それに刻まれた溝に魔力の残渣が朧げに瞬く魔法陣が見える。 目の前には美しいと言うよりは気が強そうだけど可愛い顔立ちで、直ぐにでも騎乗できそうな軽装でいて高貴な雰囲気の王。己を取り囲むのは高級そうな生地で身形のいい役職持ちと思しき中高年に、兜の隙間から見える眼光が鋭い重装騎士。それから離れて警備なのかぐるりと槍をたて持つ騎士擬き。その奥には見守るか期待している様な目をした沢山の老若男女は国民だろうか。ここは街の大広場の様だった。 「……そうか。じゃあな」 がしっ 背を向けた途端両サイドから騎士もどきに両腕を掴まれた。その周りには王を護る様に、そして逃さない為なのか退路を塞ぐ人々を視認した。背後に立つ王は当たり前の様に語りだす。 「私はフィネリア国王シュリ。そなたの名は何というのですか」 聞いた事がない国だった。この一年、クロウに分かりやすく世界史も習ったから近隣諸国くらいはわかる。という事は未知の大陸か。まさか違う世界?転生したのに更に異世界召喚?最悪のシナリオじゃないか。今まで見てきた地図にない新大陸か、自分が記憶して無い国の可能性に賭けよう。 黙ったままの魔狼にシュリは続ける。     
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