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「立て続けでしたからな。良くてもひと月は待たねばなるまい。……じゃがあの男は魔力の欠片も感じなんだぞ。痕跡は、ルクセル」
長いヒゲを掴み流す魔法師長ヒュッテは、陸師団長ルクセルに話を振る。
「壁と通路にあり得ない間隔で靴跡を発見。身体能力が尋常ではない。兵は魔法師と恊働せずして捕縛は厳しいかと」
「捕縛は無理というのですか」
「人である以上魔力が皆無なら如何程にも」
「では追跡と捕縛はルクセルに一任。防衛線常在戦場については地方行政官、議員、ウォークにヒュッテ以下副官で指揮管理を。各団の配置は現時点変更なし。異議は?」
不遜な顔のルクセルを見て満足気に笑むシュリは、異論が無いことを確認し部屋を出た。
「……さて、ルクセル、どうする気だ」
「さあね、既に三方包囲防衛中。動けば何処かで目立つ。海に向かわないのを祈るさ。重装騎士の名に恥じぬよう精々都市防衛を頼みますよ、近衛団長さん」
ルクセルは嫌味でもいわなきゃやってられないとわヒラヒラと手を振り部屋を出る。
所詮近衛は首都内地防衛。有事は各地方官僚が兵員を領地から出し、陸師各団が追々派兵指揮総轄となる。戦地でなくとも噂は入る。いずれ何処かで遭遇するだろう。
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