しらぬは俺ばかり

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「え?そうなの?じゃあ冒険者?」 「まあここで立ち話もなんだ。次の村で食事でもどうだい?」 「えっ、あの、私、後ろからついて行くし、二人とも目立つから側は無理かなーって」  にっこりと微笑えんだ。  ライバ、振られる。  どうりで道行く人や民が普段通り過ごし、避難するわけでもなく、悲壮感もない訳だ。合点がいき小さく頷いた。 「再度言うが、俺は勇者ではない。城に取引で確かにいたが勘違いされてるだけだ」 「そんな事情か」 「そうなの?」  反応はさておき。とりあえずライバの言うように立ち止まっている時間が無駄だ。次の村を目指し歩き始めた。  獣人の女は離れてついて来る。  測ったように一定の距離を保って歩く。気にはしてない。ただこれ以上の面倒はゴメンだ。俺は彼女をバグったNPCがついてきてるだけと思う事にした。  横に並ぶは魔国のエルフ。  相変わらず胡散臭いが、これまでの事を素直に考えると良い奴なのかも知れない。半信半疑だが情報を整理すれば何か違ってくるのか。それはまだわからない。  もう直ぐ日も暮れる。  風に乗る草木の香りに気が向く。弱い香りはうねりくる魔狼の本能を少しだけ穏やかに凪いだ気がした。
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