すみれ色の重装騎士

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 先ず本屋で地図を入手。言葉が通じるのに字が違うのは転生補正か!とツッコミつつ、プーのマントと上下の服をひとつ。無くて困るのは水だ。水筒になる皮袋を数個に果物、肉の塊、珍しい茶葉。魔狼に戻った際それらをまとめておける大袋等買ってはひとつずつ見られない所でコートの内側に放り込んだ。  村の入り口に立ち、地図を眺めては旅程速度を予測して唸る。  待ち受ける難関は山越え。戦地が谷の向こうで防衛が破れたら次は山の麓。これに負ければ城攻め。山に行くまでに防衛戦が崩れないことを祈るしかない。変な飛び火さえ回避可能できれば先に進める。  鎧の音が村の中から近づき背後で止まったことに嫌な予感しかしないが、ライバとミミの到着を待つ。 「そこの御仁。少し良いか」  ハスキーな声に嫌々振り向けば重装騎士の鎧は薄いすみれ色の珍しさに目がいく。その後ろには二人銀色鎧が付き従う。  ルネサンス調で飾彫りが美しく、金色もふんだんに使われた細身で軽量そうな鎧だ。光が反射して眩しさに思わず目を細める。  村の中にいた騎士は兜を脱いでいたのに、フルフェイス完全武装の姿に不安しかない。  ずいと眼前に差し出した紙は似顔絵の俺。 「勇者と見受ける。間違いないか」 「間違いだ」  かえって怪しい即答。反射だから仕方がない。新聞の存在をすっかり忘れていた。 「ふん?絵師を褒めたいくらいだが?」 「……そら似だろ」 「確かめるか?」  騎士は腕を上げ、背負う長剣のグリップを握ると背後の二人は数歩後退した。 「勇者だとして勝てるのか」     
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