おう様のもくろみ

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おう様のもくろみ

「では追補せよ、と?」  ウォークは無表情で王に問う。 「そうです。あの容姿と個我強さ、城から煙の様に消える実力。勇者の適才十二分でしょう?」  ふふっと軽く笑んだ王シュリは淡々と返す。 「しかし今それに割く人員はどこから捻出せよというのか」 「山越えをされては首都まで侵攻されるぞ。都市部の兵員はもう動かせん」 「勇者の力は欲しいが本人が拒否では協力もなにも無理では無いか」  戦時評議会で現状報告と防策について詰めたいのに女王シュリの最優先事項は勇者捕縛。  今はもうそんな悠長な時では無い。しかし、国策とする限り政治であり、枢密院と議会が必要だった。  女王シュリを中心に魔法師ヒュッテ、近衛団長ウォーク、陸海軍各師団長、宮内府、財務、秘書長官、議会員など十数名が揃う。  集中する視線は慣れたもの。シュリはまた凜然とした態度で答弁した。 「前線の均衡もいずれ崩れ都市部侵攻も時間の問題。魔族が交渉に応じるのは飽くか満足した頃だけ。もう後が無いのが明白なら力ある駒がひとつでも欲しいと思わない?駄目ならまた召喚するしかないでしょ。ヒュッテ、次の召喚は?」     
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