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今日はちょっとした用事があったのでいち早く下校したらまさかの事態に巻き込まれた。響は自分の運の悪さを呪いながらも、
「……あんた、なんなんだ一体」
「お喋りをするつもりはない。それに、もうわかっているだろう?」
「………じゃあ、あんたやっぱり」
「そう、キミと同じだ」
男が黒いコートの内ポケットから取り出したのは一冊の本。草臥れたその本を見て、響は息を飲む。
「……あたしになんの用だ」
「キミの持つ"これ"が欲しいのだ。キミを殺して奪ってもいいが、キミのは我々とは違う系統だからな。より内部まで理解するには、理解した持ち主が必要なんだ」
「………」
「見たところ、その鞄が怪しいな。さっきから不必要に右手で掴んでいるのを見るに、持ち歩いているのは確かだろう?」
「ッ…!」
わかりやすく反応を見せてしまった響を見て、男はフッと小さく笑みを零す。
「抵抗しない方がいい。さもなくば、キミの手足を千切って連れていくことになるぞ?」
男が持つ本が淡く光を放った。表情を強張らせた少女に一歩歩み寄り、さらにもう一歩前に出る。
響は逃げ出すタイミングやどうすれば逃げられるかを懸命に思案するが、何一つ浮かんでこない。逃げ切れる気がせず、逃げれば男の言う通り足を切り落とされてしまうかもしれない。
「……やめろ」
「断る」
「これは…お前なんかに渡せない、絶対に渡せないんだ!」
「ならば仕方ないな」
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