Story-1 クラスメイトは魔術師で

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男の歩みは止まらない。 響にはなすすべがない。 どうにもならない現実が響を圧迫し、体が震え出す。だけど男は止まってはくれない。 (……渡せない、これは、あたしの大切な物なんだ) 神様なんて信じていなかった。だけど人というものは、追い詰められればありもしないものにすがる傾向がある。 それは響も同じことだった。 柄じゃないのはわかっている。 だけど、響にはそれしか出来なかった。 (誰か、誰でもいいから、助けてくれ…!) 呻くように、心中で助けを乞う。 こんな状況で来るはずがないのに、響はそんな奇跡を必死に願った。 「―――、なんだと?」 男の歩みが突如止まったのは響の言葉のすぐだった。 男は片耳に装着した無線機に意識を傾け、無線機の向こう側にいる人物の言葉に意識を注ぐ。 「馬鹿な、何故『聖域』に踏み入ることが………、まさか、他にもいたのかッ」 「…?」 男の様子がおかしいくらいしか今の響には読み取れなかった。 だが、何かが起きようとしていることは心のどこかで察していた。そんな気がしてならなかったのだ。 奇跡が起きるのか。 神様が答えてくれるのか。 「―――あーあ、めんどくさいことになったなぁホント」 ―――その結末は、緊張感なんてものがない気だるげな声とともに訪れる。 奇跡が起きたのは本当かもしれない。 だが神様が答えてくれたというのは間違いである。
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