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拳を見せる夜道に男はフッと笑みを零す。嘲笑っているのではない、ただ納得して笑ったのだ。
「いいだろう、ならば容赦はしない。我々の目的のために、貴様にはここで死んでもらう」
「なんの目的かは知らないが、いいぜ。それなりに覚悟があるなら来いよ。それが魔術師としての本質なんだからな」
夜道は鞄を持つ右腕を真横へ伸ばす。男はメイスを構え、鋭い目付きをさらに険しくして夜道を睨み付ける。
「己の目指す到達点に辿り着く、それが魔術師だ。邪魔する奴に容赦なんていらない」
鞄を離す。
重力に押され下へ落ちる。
メイスを握る手に力が籠り、切っ先を夜道へ向けたまま走り出す準備をする。
「―――だから俺も容赦はしない」
鞄が地面に落ちた。
それを合図として男が駆け出す。
男は人間の枠組みを遥かに越えた速度で獣の如き威圧とともに迫り来る。
激突が起こる―――と、思いきや。
「!?」
落とした鞄を即座に拾い上げ、男が振るったメイスを下にかわして隣を通過する夜道。
逃がすかと、男は急停止してメイスを構え直し振り返る。
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