1105人が本棚に入れています
本棚に追加
夜道を捉えた両の眼。その眼前に、小さな礫があった。
鞄を拾う際にもう片方の手で掴み取っていた砂利が男の顔めがけて投げられていたのだ。
「くッ――!?」
まさかの攻撃に驚き反応が遅れてしまい着弾。目に砂粒が入り込み、男の視界を刹那の間潰した。
まずいと判断して警戒心を一際高め追撃に備えたが、追撃は来なかった。
夜道は走る。
猛然と、男に背を向けて。
目指す先には、棒立ちの響。
「―――は?」
間抜けな少女の声。それに続く少年の声が、工事現場に広がった。
「容赦なく逃げさせてもらうぜー!!!」
響の手を掴んで、夜道はとんずらを謀った。あれだけの大口を叩き、やってやるぞという空気を出しながらのまさかの逃亡。男も、手を引かれる響もポカンとしてしまっていた。
「…………!に、逃がさん!!」
慌てて追いかける男。しかし夜道は止まらない。響を引っ張るのを止めて肩に担ぎ上げ、全力疾走で工事現場を飛び出していく。
だけど速度に違いがあり過ぎる。隙を作って不意を突いたつもりだったのに、男はもう夜道の背後へ迫ってきていた。
最初のコメントを投稿しよう!