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「なっ、なんの真似だ鈴重!下ろせこのッ…!!」
「死にたくないなら体にしがみついとけよ高鳴、あと目も閉じとけ」
担がれるのを嫌がる響になどお構いなし。適当にそう指示し、響が反抗している間にも男は追い付き、空気を貫きメイスの切っ先が走る。
「ひっ…!」
恐怖し暴れるのをやめた響が慌てて夜道の胴体に両腕を回し目を瞑ってしがみつく。前に下半身後ろに上半身という体勢の響には当たらないように、重なっていない目標物―――夜道の後頭部めがけ飛ぶ。
だがそれを傾くだけでかわし、夜道は右手に持つ鞄を振り回し男の顔面へ。
「こんな物が当たると思うか」
呆気なくかわされ、鞄は男の鼻先を通過。一挙動全てがスローに見えている男にはかわすことなど造作もなかった―――が。
ズドッッ!!!!と。続けざまの夜道の後ろ蹴りは、自分の目でも追いきれないほどに速く、鋭く、重かった。
がら空きの腹部に直撃し体を折り曲げ蹴り飛ばされてしまう。夜道よりも遥かに大柄な男の体が宙に浮き上がり、弾けるように後方へ流されていった。
「がはッ!?」
転がっている男を見てニッと笑った夜道は再び逃亡を再開。その速度は先ほどまでの走りとは違い、地面を蹴散らしながら凄まじい速さだ。
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