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「強化術……【人上への昇華(じんじょうへのしょうか)】か。その精度、やはりかなりのやり手のようだなッ!」
男もすぐさま追いかける。しかし夜道との差は埋まらず、寧ろ離されていく一方だった。
男は舌打ちし、軽やかに建物の上に登ったりしてまこうとしてくる夜道を見据えながら片耳に装着された無線機で遠くにいる相手に言葉を飛ばす。
「足止めを頼む、ただし娘には当てるな」
『了解』
短い返答。男は夜道に引き剥がされないように食らい付きあとを追う。
「す、鈴重、もう少しで巻けるぞ!」
「……両手を離しとけ高鳴」
言われ、首を傾げた響の体が激しく上下した。突如感じる浮遊感に目を白黒させた響は、自分が放り投げられたことに遅れて気づく。
「えっ……!?」
マンションの屋上。そこから放り出された響は悲鳴を上げそうになったが、ドッッ!!!と目映い閃光が眼球に突き刺さった。
夜道の体が発光した―――否、紅蓮に彩られた光の爆発に飲まれたのだ。
「すッ……!!」
名前を呼びかけた。が、なんと夜道はほぼ無傷で爆煙から飛び出し、マンションの外壁を垂直に駆け降り響へ追い付いた。
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