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トランプの上に突っ伏す赤毛の男のつむじを睨み付けながら、鈴重夜道は険しい面持ちで顎に手を添え考える。
今まで五回やって五回とも正解。何かしらの細工がされているのは間違いない。でないとトランプの総数五四枚の中から一枚を確実に当てることなんて不可能に近い。彼がやる仕草の中に何かヒントがあるはず。
「早く次やってくれ陽京(ひきょう)。もう昼休みまで時間がない」
「もう疲れた、つーか飽きた。種明かししてやるよ。実はお前が選んだカードを束に戻す時の―――」
「言ったら殺す」
「頼むからはよ当ててくれよ!俺ションベン行きてえんだから!」
「俺が当てるまでダメだ我慢しろ」
「誰か助けてくれ~!」
嘆く赤髪の少年、奥野陽京(おくのひきょう)。対する鈴重夜道は腕組みをしながら陽京がマジックをするのを待つ。断固としてトイレになど行かせない。漏らしながらでもやれと言わんばかりの顔つきで待つ。
「奥野、鈴重」
唐突に割り込んできた声に夜道たちは目を向ける。
肩甲骨まで伸びる金色の髪に赤の髪留めを付け、鋭い目付きをしたヤンキー感溢れる女子に、陽京はガバリと身を起こし目を見開きながら、
「なんだ高鳴!?」
「先生が配ってたアンケート、お前らまだ提出してないだろ。あたしが集めて提出しなきゃいけないから早くしてくれ」
「そうだ忘れてた!!というわけだからマジックはまた今度だな夜道!!」
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