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夜道の言葉も待たずトランプをまとめ、慌てて教室を出ていってしまった陽京。一体どこでアンケートを書く気なのだろうか。
「どこ行ったんだ?」
「トイレ」
端的に答え、夜道は机の中からアンケート用紙をぞんざいにクラスメイト、高鳴 響(たかなりひびき)に差し出した。
「書いてたんなら早く出せよ」
「すまん」
渡し、夜道は響から顔を背け窓の外を見る。完全にそっぽを向いた夜道に響は鋭い目付きを細めてさらに険しくし、少し声を低くして、
「なんか鼻につくんだよな、お前の態度」
「そうか?悪いな」
「あたしが気に入らないのか?」
「そんなんじゃねえよ。女子と話すのが苦手なだけだ。アンケート渡したんだからもういいだろ」
「………、あっそう」
響の顔をしかめた姿が窓ガラスに映り、背を向けて歩き去って行ったのを確認してから僅かに視線を響の背中に投げた。
何も知らない彼女は不機嫌丸出しで自分の席についた。集めたアンケートを数え始めた意外と真面目なヤンキー少女の姿を見つめ、夜道は目を細める。
のんきな物だと心中で呟きため息を零した。
彼女は何も知らない。だけど夜道は知っている。
彼女が隠している、とある秘密を。
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