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と言われても、彼女とは特に何もない。特にと言ってはみても本当に何もない。
同じクラスになったのも今が初めてだし、会話をしたのもそうなってからだ。彼女がどんな性格なのかとか、そんな素性は一切知らない。
目を向けてみてももう響の姿はなく、鞄もないのを見るに帰ってしまっているようだ。
「あれか、ツンデレか。お前男のツンデレはキモいから止めとけよ」
「アホか、高鳴にはなんの興味もねえよ」
「じゃあなんでそんな冷たいんだよ?」
「別に冷たくしてない」
もちろん嘘だ。
冷たくしている自覚はある。寧ろわざと冷たくしているし、嫌われようともしている。
彼女とは関わりたくない―――それが夜道の率直な考えなのだ。
「ふーん。まぁいいけど。なあ夜道、今日飯食いにいかないか?」
「奢りか?」
「違うわ。割り勘だ割り勘」
「お前バカみたいに食うから割り勘なら行かない」
「わかったわかった、自分の分は自分で払うからさ」
「ならいいが」
「よし!じゃあまた連絡するから夜空けとけよ!」
「おー」
陽京とは家の方向が全く違うため、一端家に帰ってからの合流になり陽京とは校門で別れた。
一人になって、夜道は寄り道する気もする理由もないので一直線に家へと歩を進める。雲が点々とした綺麗な空を見上げながら、ボーっと無心で家を目指す。
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