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半分ロボットみたいになって歩いていた、その時だった。
突如、見上げていた綺麗な青空を汚す"歪み"が発生したのは。
「―――」
立ち止まり、"歪み"を見つめる。
初めての事態に少々面食らったが、すぐに意識を切り換え"歪み"について思案。今起きた出来事と、また別の出来事を察知した夜道は家の方向から体を背ける。
「………チッ、なんだよ一体」
歩みを再開させる。ただし帰路を辿るわけではない。
思ったよりも遠くない場所で起きている厄介事を確認するために、自分に関係ありませんようにと願いながら、夜道は最短距離を進んでいく。
無視してもよかったかもしれない。
だけど、夜道の性分がそうさせてくれなかった。
◆
町中だと言うのに、そこには人がほとんどいなかった。
無意識の内にそこへ近づかないように張り巡らされた【禁じられた聖域】が作用し、関係のない一般人が踏み入らなくなっているからだ。
「大人しくするのが賢明だ。抵抗すれば容赦はしない」
威圧的な声がその場に響く。工事現場の隅に追いやられ、鞄を背にした少女は息を詰まらせていた。
「一緒に来てもらおうか、小娘」
恐怖に顔を歪めるのは、鈴重夜道のクラスメイトである高鳴響だ。
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