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「『怠け者の蔦』!」
続いて展開されるマリーの結界。先回りをするように半透明のツタが伸びる。少しでも掠れば動きを遅くすることが可能なはずだが、影は跳躍し、その全てから逃げ切った。
「ちょっと何なの、あれ?」
新たな結界を張ろうかとも思ったが、考えている間に見失ってしまいそうだ。距離があるために正確なことは分からないものの、人にしては小さいように思えた。
「祥太郎君、追ってくれ。お二人は才君とここで待機を。才君、何かあったら連絡を頼む」
「ラジャー!」
才の返事に見送られ、四人は外へと転移する。
「はぁっ!」
着地と同時。マスターは膝を沈め、気合ともに地面へと掌を叩きつけた。そこから光が漏れ出し、蜘蛛の巣のような模様を描きながら、周囲へと一気に拡散する。
自分たちの足下も謎の光に囲まれ、誰も身動きできずにいる中、マスターはひとり長い息を吐いた。
「……逃げられたようだ」
それから、才たちの方を見る。こちらよりも明るい窓の中、才は大きく首を横に振った。隣に立つ桜木も、今の光景に驚いたのか、緊張した面持ちでこちらを見ている。彼女のペンデュラムも、もう反応を見せてはいないようだった。
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