嵐の後に

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「でもなぁ。良かったよなぁ、上手く行って」  ぽつりと言った友里亜に、桜木は怪訝な顔をする。 「何がですか? 結局、曲者は発見できませんでした。私の力も及ばず」 「せやねぇ。桜木ちゃん、別に追跡が得意なわけやないしなぁ」 「だから私は最初からそう言ったのに……江上秘書官があんなことを言うからですよ」 「せやねぇ」  ため息をつく彼女へ微笑みが返ってくる。友里亜はそれからバッグをごそごそとやり、中から花柄の煙管を取り出すと、火をつけた。 「ちょっと、管轄区内は禁煙ですよ!」 「もぅ、桜木ちゃんは相変わらずお堅いなぁ。大丈夫。これ、タバコやないし。ええ匂いがするんやもん」 「またそういう屁理屈を……」  今日何度目になるか分からないため息の隣で、白い煙がふぅ、と吹かれる。確かにそれは、よく知る煙草とは異なる、不思議な香りではあった。 「……桜木ちゃんが得意なんは、追跡やなくて、隠す方よな」 「おっしゃってる意味を理解しかねます」  桜木は表情を崩さないまま、缶コーヒーを静かに傾ける。友里亜はもう一度、煙をゆっくりと吐き出した。 「あの場で一番気ぃつけなあかんのは、マスターや。他には、そういうのに聡い理沙ちゃん、マリーちゃん。才ちゃんの予知は……どうやろう」 「だから何を――」 「どんくさい同僚の秘書官なんか、最初から眼中にないやんなぁ?」
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