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一瞬の沈黙。
桜木が反応するよりも早く、友里亜が煙を吹きかける。咄嗟に息を止めたが、無駄だった。体がしびれるような感覚がし、思うように動かせなくなっていく。
「これは――」
今だけのせいではない。煙管に火をつけた時から、毒は徐々に浸透していたのだ。桜木は、思い切り友里亜を睨みつけた。
「おお、こわいこわい。だから言うたやろ? タバコやないて」
「最初からこのつもりだったんですね。大臣の命令ですか?」
「ちゃうよ。桜木ちゃんって怪しいなぁって、前から思うとったけど」
「なっ――」
「桜木ちゃん、うちのことアホやと思うとったやろ? そういうの、油断につながるんやで。あの『影』をこっそり走らせたの、あかんかったよな。先に仕掛けとったのかもしらんけど、みんなの気ぃは逸らせても、うちからは、余計に怪しまれた」
友里亜は怒りに震える桜木を見下ろし、言葉を続ける。
「うちな、源ちゃんのこと気に入っとるんよ。だから、源ちゃんが好きなアパートも人も、守ってあげたいて思う」
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