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師匠と弟子
開いた目には、いつも通りの木の天井。
理沙は何度か深呼吸をすると、静かに体を起こし、大きく伸びをした。
まずはカーテンを開け、顔を洗い、水分補給。いつものルーティーンだった。まだ5時になったばかりだが、夏の空はもう明るい。涼しいうちにと、せわしなく鳴くセミをあざ笑うかのように今日も暑くなることを予想させる日差し、青い空には白い雲がぽっかりと浮かび――と、そこで彼女の思考が止まる。
「……?」
雲が、動いていた。雲が動くのはおかしくはないが、明らかにおかしい動きで揺れている。目を凝らすと、正体は白い鳥だった。それが、凄い勢いで飛んでいる。――どうやら、こちらに向かって。
「あれって――」
思わず口に出した時には、その鳥の姿は目前へと迫っていた。
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