師匠と弟子

9/20
85人が本棚に入れています
本棚に追加
/415ページ
「どうかしら。たまーにリサからお師匠の話が出るんだけれど、そんなにひどい人って印象はないのよね」 「手紙も簡潔ではあったが、理沙君を思いやる気持ちは伝わって来たよ。彼女の技術を見ても、丁寧に教えていたことが窺える」 「じゃあ何で、あんな変な態度なんだよ。ぜってーおかしいだろ」 「それは、わたしもそう思うけれど……」  理沙の様子が変なのは確かだ。才の言葉に強く反論できるほどの根拠もない。  マリーが助けを求めるように視線を向けると、マスターは腕を組み、口を開いた。 「雨稜(うりょう)さんは人付き合いが得意ではないようだし、そういったことを理沙君は心配しているのかもしれないね」 「さっき、いきなりだとビックリしちゃうとか言ってたし、そんなとこなのかなぁ。……でも、理沙ちゃんの師匠って、どんな感じの人なんだろう」 「そりゃ偏屈じじいだろ、やっぱ。仙人っぽい感じの」 「女の人かも知れないわよ? 意外と若かったりするのかも」  祥太郎の言葉を皮切りに、今度は理沙の師匠への興味が、皆の中へと膨れ上がっていく。
/415ページ

最初のコメントを投稿しよう!