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ヨウコソ、ワガヤヘ
「ショータロー、お願い!」
「よしきた!」
マリーの声に応え、祥太郎は意識を集中させる。すると、結界に阻まれ、動きを止めていた水が一気に消滅した。
『ゲートルーム』の一角。そこにはアクアブルーに揺らめく空間が広がっている。大小さまざまな色の魚影が行きかう様子は、巨大な水族館に迷い込んでしまったかのような錯覚を、見る者たちにもたらした。
「また来るわ!」
バラバラに泳いでいた魚の動きが、示し合わせたかのように止まる。サメに似た魚たちは、こちらへと向かい一斉に口を開いた。
再びマリーの結界がそれを防ぎ、祥太郎が能力で押し戻す。先ほどから一進一退の攻防が続いていた。
「リサ、まだなの!」
「ごめん! お待たせ!」
言ってずっと『気』を練っていた理沙が、両手を広げる。
「マリーちゃん、祥太郎さん、よろしくお願いします!」
そして彼女の手から金色の光が放たれた。
それは解除された結界の一部をすり抜け、祥太郎の能力によって加速する。
「『ライトニング手のひら.net』!」
空間を覆う網となった光は、あわてて逃げようとする魚たちを根こそぎ捕らえた。あれほど沢山あった魚影は、はるか彼方へと飛ばされ、見えなくなっていく。
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