京(guitar)×『まなべ』さん物語

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「こんばんは」 「こんばんは…」 「?どないしたん…なんや元気ない?」 「え?そんな事ないですよ」 「そうか?」 中に入り いつもの定位置に座る 「なぁ『まなべ』さんはプロなりたいとかないの?」 「…………」 「『まなべ』さん?」 「へ?」 「ほんまどなしたん?」 「あ…えっとなんだっけ?」 笑って誤魔化された? 「いや、プロなりたいとかないの?」 「あ…あったんだけど…今はそうでもないかな…」 「何で?勿体無い」 「プロになりたい動機が不純だったし(笑)」 「そうなん?『まなべ』さん真面目そうやから 凄いなりたいんかと思うてた」 「まこと…」 「?まこと?」 「私の名前…まなべさんだけど…下の名前…」 「あ…あぁ…」 急に言われて そう言えば下の名前聞いたことなかったと思い出した 「…やっぱり…興味なかったかな」 あははっと笑う 「いや、なんや そんなんどうでも良かったって言うか…」 「どうでもいい…か」 うつむいてしまった 「あっいや、悪い意味やないよ?何て言うか こうやっておるんが 自然やったと言うか 居心地良かったって言うか…」 「私はずっとドキドキしてた…お店に初めてキョウさんが来たときから…」 「え…」 「家の手伝いっていうか 子供私しかいないから 必然的に家の事するのが当たり前で 高校生なってからお店手伝うようになって…」 ずっと下を向いたまま膝の上で握りこぶしをつくって 一生懸命話してくれる 「そしたら一昨年末からキョウさんが来るようになって」 「その頃 ここら辺に引っ越してきたから…」 「凄い嬉しかった」 段々肩にも力が入ってきてる 「でも、騒いじゃ迷惑だって 普段通りに接客して…でも、Liveチケットくれて 凄い嬉しくて…勇気だして部屋にいれて…でも、それだけで…それだけで、何時まで経っても『まなべさん』で…」 段々涙声にもなってきてる… 「私だけがっ…一人で勝手にドキドキしてっひっく…」 涙がポタポタと握りこぶし作ってる手に落ちていく 「私だけがキョウさんの事!?」 そこまで言った時 俺は彼女を抱き締めていた
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