足跡

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いつも何気なく通う道。 その途中に狭い路地がある。 人一人が通れるがそこへ入る人を今まで観た事はない。 いつもは気にもしない所。 なのに、なぜか今日は気になって少し覗いてみた。 すると一つの足跡。 それは先へと続いている。 どこへ出るやもわからない奥に好奇心をかき立てられた。 一度気になり始めると、もうその気持ちを押さえられない。 もしかしたら近道発見って事になるかもしれない。 そんな単純な考えだけでそれをたどってみる事にした。 足跡は続く。 誰とも解らない足跡を追う。 やがて足跡は闇深い森へと辿り着く。 足跡は終わりを告げる。 道はその先にはない。 嫌な考えが頭をよぎる。 自殺者か!? 草陰に何か見えた。 そこには一足の靴! その先には森…。 間違いない。 そう確信めいたものが次第にジワジワと心に宿り始める。 死体は観たくないが、このまま発見されぬままでは仏様が浮かばれない。 自殺志願が浮かばれるかどうかは別として、 ここまできた事がある種自分の中で使命感の様なものが働いたのかもしれない。 せめて遺書はないかと靴の側まで行ってみる。 するとその先へと裸足の跡が続いている事に気が付いた。 意を決してその森へ と進む。やがて足跡は一本の木に辿りつく。 首吊りか…ゆっくりと視線を上へとあおる。 しかし死体はない。 その下に大きな岩がある。 台座に適した形の岩に足を乗せ、そこからもう一度上を見上げる。 しかし何もない。 諦めて視線を戻すと目前にロープ!? さっきまでこんなモノは無かったはずだ! 見落とすなんてありえない!! これではまるで…私が…!? その時信じ難く、それは起こった。 それまで台座にしていた岩が突然揺れ、バランスを崩した。 とっさに下へと観やる。 あらぬモノを観た! 岩には半透明の足!! その足だけの足が岩を蹴っていたのだ!! しかしその出来事を考えている余裕は無かった。 目の前のロープが首に巻き付く! 体の重みでドンドンと締めつきを増してくる。 意識が無くなってくるのがわかる… 霞んでいく目に先程の靴が映る… そこにはさっきまで自分が履いていた靴… そしてその先には一つの足跡……。 そこを辿ってくる自分の姿が微かに見えた。 幻影か… それとも………
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