落札品

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 それから、なんとか家に帰って来たのだが、どうも心が落ち着かない。  昨晩の事といい、さっきの事といい、気持ちの悪い事ばかり。  とりあえず、シャワーを浴びて、スッキリしてから考えようと思い、ワンピースを脱いだ。 ”そう言えば、ワンピースの襟首……なんでチクチクするんだろう?” ”お直し、どうやってもらおうか?”  そんな事を考えながら、ワンピースを手に取り、襟首辺りを確認した。  パッと見は特に目立った物は目につかないけれど、ただ手で触った感触も、少しチクチクする。  顔を近づけてよく見てみると、どうやら裏地を縫い付けている部分から、黒い糸のようなものがプツプツと出ていて、それがチクチクする原因らしい。 “一体、これは何だろう?”と思い、どうせお直しに出すなら、縫い目をほどいて中を確認したって同じこと。  私は裏地を外す為、その黒い糸のような物が出ている縫い目を、糸切狭で丁寧に糸を切り、ある程度ほどいたところで中を見てみた。 「ヒッ!」  喉でヒューヒューと息が漏れるような悲鳴を上げ、ワンピースを放り投げた。  全身に寒気が襲い、足元からゾワリと皮膚が粟だった。 “危険! アレハキケン!”  脳が警鐘を鳴らす。  しかし、頭では分かっているのに……手が……体が……”再度、確認しろ!”と勝手に動く。  ワンピースを床から拾い上げると、小刻みに震える手で、再び表生地と裏地の間を覗いた。  そこには、襟首の縫い目に沿って、びっしりと長い……女性のものらしき黒髪が縫い付けられていた。  そして、ネームタグの裏辺りには、小さな白い布らしきものも縫い付けられている。  恐る恐る、それを見た途端、私は大きく目を見開き絶句した。  そこには、血なのだろうか?  黒ずんだような赤い色で一言だけ書かれてあった。 『シネ』
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