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「結局学ランになったんだよなー」
押入れからダンボールを引っ張り出し、中から制服を取り出して、ピカピカと輝いて見える真新しい学ランを見つめる。
俺の希望通りの学ラン……! 今まで放置プレイしててごめんな……!
あの質問が書かれた紙を見たときは、本当に制服が出来てないのかという不安がよぎったけど、無事にこうして手元に制服が届いて安心した。
これからよろしくという意味をこめてそのまま学ランを抱き締める。うわ、何だか新品の布のいいにおいが――
「ちょっと伸也! アンタまだ寝てるの!?」
「うわっ! 勝手にドア開けんなよ!」
「あら起きてたのね」
突然部屋のドアが開いて、そこにはエプロン姿のままの母さん。
頼むからノックをしろ。そして俺が学ランを抱き締めているという行為にせめてツッコミをいれてくれ。
「ご飯できてるから、手洗って早く降りて来なさい」
「……すぐ行くって」
願い虚しく母さんはノーツッコミで部屋から出て行った。
俺は学ランを一旦またダンボールに戻そうとした……が、その時、学ランの下に敷かれていた紙の奥に更にもう一着何かが入っていることに気付く。
「何だ?」
ゴソゴソと紙の下にある制服を取り出し、広げるとそれは――
「セーラー服?」
どこからどう見てもそれは女物のセーラーで。
白セーラーに紺の襟。そして赤色のスカーフ。定番中の定番で俺が一番好きなセーラー服だ。
いやでも紺色のセーラーもやっぱり捨てがたい……でもやっぱり白セーラーに白カーデ萌え袖は最強だと思う。
「可愛いな――じゃなくて! 何だコレ? ミスか?」
学園側のミスとしか考えられない。
俺がコレを着るワケがないのだから、きっとミスだ。
「明日、学園の人に言っておくか……」
「伸也! 早くしなさい! 片しちゃうわよ!」
「あー! 今行くって!」
母さんの怒りの声が聞こえ、俺はセーラー服も学ランもダンボールに投げ込み部屋を出た。
あ、カレーのにおいだ。急に腹減って来た……いつものパターンなら明日の朝は今日の残り物のカレーになるんだろう。
何はともあれ、俺は明日私立村咲学園へと入学する.
俺の青春は全て託した。あとは夜眠れるかどうかそれだけが心配だ。
そう、俺はこの時気付いていなかった。
ダンボールの中に入っていた、一枚の紙切れに――
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