山代 明子

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『自分以外なら、誰でもいい』  これは決して薄情なんかではなく、当たり前の感情だ。      事実、僕もそう思っていた。  こういう時は大体、出席番号が鍵になってくる。  一番先頭の人物が生け贄になるのだ。  もちろん、中にはひねくれて違う名前を書く人もいるだろうけれど……級長委員会では歴代『ア』からはじまる名字の人物が異様に多い。  これはもちろん上も把握しているけれど、たかだか生徒会の使いパシリにそこまでの配慮はいらないと判断したのか、黙認されている。  『生徒の自主性』の名の通り、投票で選ばれても辞退は自由だ。  しかしその場合また投票となり、出来立てのクラスで顰蹙を買うこと間違いなし。よっぽど、部活に忙しいとか他にやりたいことがあるとかとんでもない人見知りでもなければ、とてもじゃないけど断れる雰囲気ではない。  もしも名前がア行で、委員長になりたくないのならば最初の自己紹介でそう申告するべきだ、というのは一番初めのホームルームで担任から言われている。  特に趣味もなく、必要最低限の清潔さを保っていれば殊更に票は集まった。僕の名前は井原だから、一年生の頃は回避できたけれど、二年生の新しいクラスでは運悪くア行が根こそぎ違うクラスへの配置になってしまった。
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