未来のアルバム

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「未来のアルバム」 「それにしても、お前って本当に凄いよな」 会社帰りにたまたま立ち寄った居酒屋で偶然小学校時代の友達に出会った。そこで彼はそんな言葉を口にするものだから、僕は「何故?」と訊き返す。 「ほら、夢叶えてやりたい事やってるじゃんか。結婚もして、俺とは大違いだよ」 友達はビールをグイっと飲み、ジョッキを静かにテーブルに置く。 「ってか、お前って小学生の時からそうだったよな。なんつーか……“余裕”があるっての?どんな事があっても平気な顔してさ……まるで……」 「まるで?」 「未来が見えているかのような……」 まさか、友達の口から未来などという単語が出てくるとは思わなかった。だから僕は口に入れた枝豆が気管に入りむせる。 「おいおい、大丈夫か?」 「あぁ」と心配してくれる友達を見る事無く、僕は目の前に置かれたビールを見ながら頭の中にアルバムを思い描く。 それは実在するアルバムで、今も僕の家に存在している。 僕はその頭の中に浮かぶアルバムを広げながら「未来が……見えているとしたらどうする?」と友達に投げてみた。 友達はキョトンとして、「まさか」と笑う。 頭の中で広げたアルバムには、産まれてから死ぬまでに撮影された(つまりは人の一生の)写真がビッシリと並べられており、丁寧に日付やその写真のエピソードまで記されている。 それは決して空想の産物ではなく、家に帰れば見る事のできるアルバムなのだ。僕はそのアルバムの存在を友達に話してみる。すると、友達は「ハハハ」と笑い、「まだそんなに飲んでないだろ?」と信じない。 「本当さ、子供の頃に……父から渡されたんだ。このアルバム通りの人生をお前は歩んで行くと……」 「お父さんから?」 「そうさ。それは我が家に代々伝わるモノで……自分の未来を写真で見る事が出来るんだ。どんな学校に入学して、どんな学校を卒業するのか。誰と出会い、誰と記念写真を撮るのか。妻との写真や、子供の写真も既にそこに記されていて……」 「嘘、ヘタクソだな。だいたい、代々伝わるモノだったとして、それじゃあ先祖の写真もそこにあるってのか?」 「ある」 「ははは。だとしたら、どれだけ分厚いアルバムなんだよ」 「それは……」と僕はアルバムを想い浮かべて説明する。「次元を超越してるんだ」 「次元ときましたか。ルパンは登場するのかな?」
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