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「まぁ、信じてくれないならそれでもいいさ。別に信じてもらいたくて話しているわけでもないしな」
不機嫌な顔をした僕に気を使ってか、友達は話を進める。
「ちなみに、次元が超越とは?」
「そうだな……」
僕はアルバムを広げるジェスチャーをしながら友達に説明する。
「表紙は普通のアルバムみたいなんだが、広げると3Dホログラムのように、空間に写真が表示されるんだ」
「へぇ」と未だに信じていなさそうな口ぶりで友達は言葉を続ける。「まるで、未来のアルバムみたいだな」
未来のアルバム……
そうだ。まるで、未来から来たアルバムのようである。
「まぁ、そのアルバムが本当にあるかどうかは別として……何でそれを俺に話してくれたわけ?」
「それは話の流れで……」
「そのアルバムがあるから、自分は人生を余裕の表情で歩んでいると?」
僕はコクリと頷くが、この話を持ち出したのはそれだけではない。
不安というか……そのアルバムに気になる所があるのだ。
そのアルバムは……僕が死んだあとの未来も見る事が出来るのだけど、僕が死んだあと……子孫の写真が……
「いいなぁ」と友達はボヤき、ビールの残りを飲み干す。「俺もそんなアルバム欲すぃーー」
僕はその言葉に何も返す事無く黙ってビールを飲む。
「んじゃ、そろそろ帰るか」
友達は立ち上がりレジへ向かい、お金を払いながら僕を見る。
「お前と久々に会えて楽しかったよ。割り勘だからな。あとでお金」
「はいはい」
未来のアルバムについて気になる事を友達に言えぬまま、僕は家へと帰った。深夜という事もあり、家に帰っても出迎えてくれる人はいない。
とりあえず僕は自分の部屋入り電気をつけて未来のアルバムをタンスの奥から引っ張り出す。そして、アルバムを開きパラパラとめくった。
その時だ。
カチャリと音がして、部屋に嫁が入って来る。
「今、帰ったの?」
「あぁ、ごめん。起こした?」
「ううん。ちょうどトイレで起きただけ」
嫁は僕の手元を見ながら言う。
「それ。そのアルバム。また見てるんだ」
「あぁ……うん」
嫁はこのアルバムの秘密を知らない。とりあえずハイテクなアルバムぐらいの認識だ。
「気味の悪いアルバムよね」
僕はアルバムに目を落とし、「だよな」と苦笑いを浮かべる。
そこには僕の子孫の家族写真が表示されているのだが……
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