ドワノフ・スワマン

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ラジオの電源を落として俺は制服のコートを羽織る、ガチャガチャとドアノブを回して空気凍る朝の西国境の町を歩いていく。 AM7:00 検問所に入ると、ポストには通達書とともに例の手配書が入っていた。写真には痩けた頬にやたらと鋭い目つきをした女が収められている。あまりにも鮮明な写真だった。どうも一度とらえた後に逃げ出されたようだな、だからこそ未だレブネフ国内にいると断定できたのだろう。 俺は検問官室に備え付けてある薪ストーブに早速火を付ける。パキパキと心地よい音を聞いているとレブネフ側から何人かの通過者が歩いてきた。 「名前とパスポートの製造国」 ドアが開けられ、入ってきた男にさっさと質問をぶつける。俺は無駄なことが嫌いな気質だ、報告書と番号の照らし合わせに必要なこと以外は要らない。どうせ聞いたところでパスポート通りにしか答えないのだから。 「トム・ボッソー、それはレブネフで作ったパスポートさ。どうしたんだ今度の検問官さんは、バカに無愛想じゃあないか」 赤い毛糸帽のトムは窪んだ目を一杯に開いて、おどけた調子で話しかけてくる。俺はかまわず業務を続ける。 「目的は? どうしてイルクテージに」 諦めたように首を振ったトムはおとなしく答え始めた。そう、最初からこの調子でいい。通過者との馴れ合いなどつけ込まれる隙にしかならない。     
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