ドワノフ・スワマン

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そういって男のパスポートに赤字のdinialのハンコを押す。入国拒否、このパスポートは次回の検問でも参考にされるだろう。 「待てよ、おかしいだろう? 何で俺がダメなんだ他の奴らのと何も変わらないだろう」 「何だ、どうかしたか」 既に入国の手続きを終えた残りの男たちも顔を出してきた。 「パスポートが違う、諦めるんだな。前の検問官は騙せていたようだが俺はそうは行かない」 イルクテージのパスポートは国内にある国境管理局の事務局か、周辺国に建てられたイルクテージの大使館で発行される。その際のパスポート番号は一律に定められた法則通りに印刷されており、膨大なパスポートの管理の他に所有者との照らし合わせで不審者を弾く役割があった。 最初のアルファベットの組み合わせは製造された国を表す。続く六桁の番号は上二桁が性別を、残りの四桁が単純なナンバリングを示す。 この男の組み合せのAoはレブネフで問題ない、しかしこれに続く34。 通常は奇数で女性を偶数で男性を表すのだが、アルファベットの二文字目が母音の時に限りこの法則は逆になる。つまりAoの32とはレブネフの女性を表すものであり、少なくともこの男のパスポートではない事が確定するのだ。 渡されたパスポートを丹念に見渡し、男は落ち着かない様子だ。     
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