ドワノフ・スワマン

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「クソが、おい検問官。何とかいったらどうなんだ? ライノが不法入国なんてあり得ないだろうが」 意外にも怒る三人を諌めたのはそのライノという男だった。 「大丈夫だみんな、俺はこいつと話をつけてから行く。みんなは先に工場へ向かってくれ、遅刻に対する工場長の懲罰を受けるのは俺だけで十分さ」 そう言われてもしばらく引き下がらなかった三人だが、ライノの粘り強い説得にようやく頷き足を東に向けた。 ライノは息を吐いたかと思うと、途端に目つきを変え媚びるような視線を送ってくる。嫌な顔つきだった。 「なぁ、頼むよ検問官さん。俺の唯一の食い扶持なんだ、あいつらともまだ離れたくねぇ。通行料を弾むからさ、見逃してくれよ。俺の三日分のメシ代だぜ、これでもダメなら通るたびに持ってくるからさ」 「なぁ、良い条件だと思わないか? 俺だって中に入って悪事を働こうなんて思っちゃいないんだ。頼むよあんたなら分かってくれる、そうだよな」 そう言いながら俺の手に布包みを押し付けてくる。不快だった、俺は包みを掴むと窓口から通過者用の部屋に叩きつける。 「言いたい事は終わったか? さっさと国に帰れ。ここは規律と秩序のイルクテージだ、お前のような輩を通す理由などない」     
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