1、文明の発展

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「祭さん、今日の放課後はどうなさいますか? 」 立ち上がった祭に続いてエナと朱音も立ち上がる。 昼休みが終わるまではまだ時間があるが、午後は実技の授業があるために体操服に着替える必要がある。 「放課後? 家に帰る支度をして、その後はお父さんに魔法学の質問に行く予定かな」 「もし時間がありましたら、収穫祭で着る洋服とレンブラを買いに行きませんか? もちろん、エナさんも彩音さんも一緒に」 「もちろん。大賛成」 「祭、私も時実先生に質問に行くから一緒に行こうよ」 「では、私もご一緒に」 クラス分けテストの翌週に行われる収穫祭はイルニティ王国において、聖戦記念祭の次に大きなイベントである。 聖戦記念祭は王国以外からの入国も認められているが、収穫祭は原則王国国民のみに限られる。 居住区と農場区の二つの区域で大々的に行われ、麦藁で作られた大きな人形が街に置かれたり、多くのお店が格安の値段で料理やお酒を出す。 三日間行われるが、その三日間では食い倒れる人が続出するというほど、料理とお酒が振舞われる。 収穫祭開催中は毎日新しい服を着ることとレンブラと呼ばれるトリスの葉と宝石から作られるアクセサリーをつけるという伝統がある。 レンブラには様々な種類があり、未成年者(16歳未満)であれば白色の宝石のレンブラを、成人者で未婚の場合、男性は青色の宝石、女性は赤色の宝石のレンブラを、既婚の場合は男女共に緑色の宝石のレンブラをつける。 ある意味で未婚の男女の恋人探しの場とも言われている。 誰もが楽しみにする祭である。 学校がクラス分けテストを収穫祭の開催前に行うのは、開催後であれば興奮が収まらず、テストの成績に影響するとの考えがあったからだ。しかし、当の学生たちは祭の前に行われるテストのため、集中力が続かなかったり、テストのでき次第で祭へのテンションが変わるという。 昼休みが終わり、グラウンドに集まった祭たちは放課後の買い物が楽しみで授業に集中できなかったのは、言うまでもない。 ――――――――――
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