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外は月や星が出ていて、いつもと変わらない夜だった。しかし、街並みは明らかに今の時代には無い建物ばかりだった。
「星野、今日の仕事のメンバーだ」
同じように扉の前で待機していた男女が蒼井の声で振り向く。その顔は見たことのある顔だった。
「はじめまして、ではないですよね」
「そうね。私は知ってるわ。成績優秀で女生徒の間で人気が高い星野三月くん。私はあなたの先輩の寒田椿。よろしく。」
「僕も君の先輩なんだけど。分かるかな。川島優斗なんだけど」
赤い髪が風でなびいていた。寒川は足が速く陸上競技で有名な女生徒だった。
寒田とは対照的に栗色の髪をした小柄な青年・川島は機械を扱うのが上手く、高峰が話をしていた。今年から体調が悪く授業は休みがちだと聞いていたが、そのような雰囲気はない。
「あとは、そこでツンとしている奴が清水雪人」
「清水さんとははじめましてだね。確か同じ学年だった」
「ああ。よろしく」
興味がなさそうで、漆黒の目が冷たさを際立たせていた。
「スバル、自己紹介より今日の活動についての話だろ」
清水は蒼井の方を見て指示を待っていた。
「そうだな。今からこのワックマを倒すわけだが」
「ワックマって何ですか」
「ワックマはこれぐらいの小さな熊だよ」
寒田がぬいぐるみサイズだと手で表現する。
「熊ってあの動物のですよね。それは協会が絶滅危惧種だと認定していて殺すことは許されていません」
「ワックマは熊であって熊じゃないんだよ。熊の姿は仮の姿で中には気持ち悪い緑の生物がいるから。」
川島が腕に装着している携帯ノートでワックマを表示させた。可愛らしい見た目に対し、中身はなかなかのグロテスクな生き物だった。
「今日はその一体だけですし、早く見つけましょう。」
今日は楽な仕事だから心配しなくてもいいと川島は言った。その言葉に寒田は賛同した。しかし、蒼井は緊張感のある表情をしていて、教室にいる時とはまるで別人のようだった。
この後、予想もしなかった光景が目の前で起こった。日常では経験することのないこの日の衝撃をこの先もずっと覚えている。
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