八章

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きっと出会っていなければ、きっと気づくこともなければ あなたが笑いかけてくれることも、あなたと笑うこともきっとなかった。 「そういえばここにいていいの?」 「ん? あーたぶん仕事中だよ。」 「あはん~ 仕事してるからばれないと思ってるんだ」 「ち、ちげぇわ」 「うふふ この感じ久しぶりだなー でも戻ったほうがいいと思う。普通に話せてるけど別れたばかりだもの。それに私たちはライバルだよ?」 「ふっ そうだな」 そういって笑いあった。 きっとばれないことは悠も思っていないと思う。 でも少しだけでも話せたことがうれしかった。 また笑いあうこともできたことが嬉しかった。 でもそれがいつまでも続くわけでも、戻ってくるわけでもないってことを私たちは知らなかったんだ。 あんなこと起きてしまって忘れらない思い出になるなんて、心にぽっかりと穴をあけることになるなんて こうやって笑いあっている私たちは知らなかったんだ。
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