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海野 翔太
自分で考えてみて、海野 翔太(うみの しょうた)という人間はどこをみても平凡だと翔太は思う。
高校生である自分だが高校デビューという波に乗って髪を明るく染める訳でもなく、制服も校則に反さない程度の範囲で着こなし、授業には毎日出席するが成績やスポーツはそこそこ。良い意味でも悪い意味でも目立つことはない。ただ、少し思う。ただ一点だけは、平凡というにはあまりにもかけ離れた部分がある、と。
朝、翔太がいつものようにけたたましく鳴り響く目覚ましで起きると、傍らには起こすように頬を舐めているマルチーズがいた。起きることを告げるとマルチーズは部屋から出ていった。身支度をして一階に降りると父と母が朝の挨拶をかけてきてくれる。それに答えて朝食を食べる作業へと移ると父の傍らにはラフ・コリーが。母の傍には先ほど自分を起こしてくれたマルチーズがいるのが視界に入る。ちなみに、犬を二匹飼っている訳ではない。
朝食を食べ終え、いってきますの挨拶を二人に伝えるといってらっしゃいというやさしいふたつの声が返ってきたことに自然と笑顔がこぼれ、玄関へと向かう。する、する、と二匹の犬が自分の足元へ寄り添ってきた感触がしたので二匹にもいってきますと小声で言うと玄関の扉を押した。
自転車で自分の通う高校へと向かっていると通勤するサラリーマンやOL、通学する学生などが目に入る。人の数と同じくらいの別のものも視界に入れつつ、遅刻しないよう足に力を入れ、勢いよくペダルをこいだ。今日も快晴である。
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