ある夜

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Jはしげしげと見つめて、それから自分はいま人間なんだ、と感じた。 Jの形は定まっていない。もともとがどんな形かも知らない。記憶が始まったのがいつなのかもわからないが、しばらくは生まれた形のままだった。それから人の世界へ来て、人の形になった。彼を召喚した人間がそう命令したからだ。 Jは今まで仕えた主人たちのことを、よくは思い出せない。それほど長く生きている。 幾人か覚えているのは、彼が殺した主人たちだ。 Jには殺意などなかった。彼はもともと、そうした考える存在ではなかったからだ。 もちろん人が死んで悲しいと感じることもなかった。ずっと長く人の世界で人の形で暮らしてきて、最近ようやくそのような感覚が理解できるようになってはきたけれど。 彼が殺した主人は、要は不器用だったのだ。 例えるならJは武器。それも大砲のような扱いの難しい武器だ。彼を呼び出した主人の多くは、彼を上手に使いこなせなかった。そして何人かは彼を暴発させた。 Jは思い返しても、自分が悪いとは思わない。相手が未熟だっただけだ。悲しくもない。それでもなぜか、その人たちのことは覚えている。 Jは猫の姿でいるときはそれに満足しているし、人の姿になるとそれもまたいいなと思う。 ただ、寒い。     
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