ある夜

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服は着ているが、首や手や、何かで覆われていないところが寒い。 部屋に行って寝ようか。しかし。 長年人の世界で暮らすうちに、少しは人の常識が身についている。猫の姿ならばともかく、人の――青年の姿で、少女が眠っている部屋に入るのはどこか気が引けた。 別に何もないのに。 軽く苦笑する。 Jには生殖機能などない。そういう生き物ではないのだ。もちろん性別なども関係ない。 仮に、と考える。 Jの体は完全に人の姿を模している。人の男として女性と接することはできる。 もし女性と行為に及んだら――何か、できるのだろうか? たとえば、子どものような。 初めての思考に新鮮味を覚える。 自分の子ども。親すらないのに。 もっと長く生きれば、もっと人間臭くなるのだろうか。そしていずれは自分が人ではない何かであることを忘れてしまうのだろうか。 そうかもしれない、とJは思う。ひどくゆっくりではあるけれど、Jには人の意識が生まれてきている。 すべらかな指で首をなでる。そのうちに風邪をひくなんてことも起きるかもしれない。 階段を上がり、狭い廊下を通ってユーミンの部屋へ行く。 扉は彼が触れる前に音もなく開いた。     
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