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そっと中をのぞく。室内は月明かりで明るい。窓と反対側にハンモックが吊ってある。少女はいつもどおり布団にくるまって寝ている。静かだ。寝息も聞こえない。
少女の友人のこうもりも枕元で寝ている。Jは明るい窓際へ行った。カーテンを透かして白い光を浴びる。
その辺りにいないと、不意に少女が目を覚ましたときに都合が悪い。
ユーミンは、彼が月明かりで変身すると思っている。
長い指でカーテンに触れる。
物音がする。天井だ。何かがずるような軋みが聞こえたあと、天井に開いたままになっている穴から蛇の頭がのぞいた。大きい。人の頭ほどもある。
「……J?」
のぞいたのはリタだった。ああ、と返事をする。リタは納得したように頭を戻した。眠そうだ。室内の気配に気づいて目を覚ましたのだろう。
ふと自分の体を見下ろす。足音がしたのだろうか。Jは人の姿であっても猫の足音しかしないとユーミンに言われたのはいつだったか。
片手でもういっぽうの手首をつかむ。しっかりした皮膚と体温の感覚。以前は見た目と質量が一致しなかったのに。
収束してきている。
少し前まではもっと拡散していた。どこからどこまでが自分なのか、自分でもわからなかった。
Jはときに風であり雲だった。だからこそ、自分を指すアイコンが青年であろうと猫であろうとかまわなかった。
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