怪事件捜査クラブ

エピローグ

　要は部室の窓際に座り、ぼうっと遠くを眺めていた。
　すると突如白い手が伸びてきて、要は驚いた。

「どうしたの？」

　きょとんとした声が飛んでくる。腕と声の主はあかねだった。あかねは握っていた缶コーヒーを要に差し出した。
　ありがとうと小さくお礼を言って、

「いや～別に」

　おちゃらけて答えた要だが、覇気がない。
　あかねはにこりと笑いかけた。

「ねえ、なんでお兄さんが刑事さんだって黙ってたの？」
「え？　――いやぁ……」

　あかねの質問に、要は苦笑した。
　なんでって言われてもなぁ……と、頭を掻く。〝あんな〟兄貴だからとは言えなかった。

「今度、紹介しろよ」

　言ったのは秋葉で、要の前の席に後ろ向きに座って机に頬杖をついた。

「ヤダよ。恥ずかしい」
「また、そんな事言って……色々協力してくれたんだろ？」
「そうよ」

　秋葉は言いながら、缶ジュースの栓を開けた。あかねは同意しながら、要の机に手をつく。そして由希はあかねの横に椅子を持ってきて、小さく頷いた。

（だって、あんなシスコンの兄貴にあったら、全員確実にひく）

　そんな事を思いながら、要は缶コーヒーの栓を開けた。そして強く言い放った。

「絶対に無理！」

　あかねが横でぶーぶー文句を言ったが、要は聞かないふりをした。そんな要を見て、秋葉と由希は笑う。

　そのうち秋葉があかねをなだめる声が聞こえてきた。
　そんな、たわいもない会話や笑い声が要の耳に優しく、暖かく響く。
　そして、おもむろに口を開いた。

「――あたしさ、両親殺されてんだよね」
「え？」

　あまりの唐突な言葉に、あかねはそう小さく絶句して、秋葉と由希は驚きながら要を見つめた。

「小学生の頃にね。でも警察は無理心中だって言ってさ、結局犯人が自首するまでの間、色々言われたよ。親戚にも、学校の連中にも、ご近所にもね。まあ、私は最初から殺人だと思ってたんだけどさ。犯人捕まって殺人だって分かった後は、みんな手のひら返したように妙に優しくなったりね。それでも、噂のネタにはちょうど良いから、やっぱり色んなとこで色々な事言われたよ」

　言って要は笑う。

「犯人の事めちゃめちゃ怨んだし、憎んだよ～。だからかなぁ……あたし、思ってたんだ。榎木先輩も死んで良いって」

　要の言葉に、あかね達は静かに耳を傾けた。