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プロローグ
真っ直ぐに伸びた黒髪が、風に泳いだ。
駆け抜けていった風を目で追おうともせず、少女はただ一点、線路を見つめていた。
人の熱気が漂うプラットホームの中央から外れて、一番端に少女は立っていた。電車が最後に入ってくる場所。車両の最前列。
人があまり目を向けない場所で、少女は浮かない表情を浮かべていた。
自分のした事は、正しかったのだろうか？ 頭の中で自問自答を繰り返しても、正しい答えなど出てこない。けれど、彼女は止まる事も戻る事も出来ないと知っていた。
不意に、衝撃が背を突いた。
がくんと首が撓り、一瞬背ではなく首に痛みが走った。
だが首を押さえた時にはもう、別の痛みがあった。足のすねを強かに打ったのだ。
反射的にすねを擦りながら、彼女ははっとした。
線路が目前にある。
さっきまで、上から見下ろしていたはずの線路が、今目の前に……。
彼女は勢い良く顔を上げた。だが、その時にはもう全てが遅かった。
見慣れた四角い電車の顔が、目と鼻の先に迫っている。
（私、あいつに殺されるんだ）
「――っ」
悲鳴を上げる間もなく、少女は車輪に踏み潰された。
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