第十一章・あなたを想う

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 皆が一瞬ドキリとし、自分のじゃないかと確認すると、あかねが電話を取った。 「はい、もしもし!」 「お前、携帯ぐらい切っとけよなぁ」  秋葉が小声で文句を言うと、あかねはいきなり叫び声を上げた。 「ええ! 本当ですか!?」  近くにいた秋葉は思わず耳をふさぐ。 「何だ!?」  あかねを睨むと、あかねは嬉しそうに「はい、はい」と答えていた。そんなあかねを要達は何事かと見つめていた。三枝は、要達を尻目に榎木に近づき、声をかけた。   「榎木、一緒に警察に行きましょう。自首ならば、罪は軽くなりますから」  榎木は何かを考えるように、三枝を見つめた。  そして、深く頷いた。  榎木の顔は、先程までの剣のある顔ではなくなっていた。  憑き物が落ちたような、穏やかで、罪の意識をどこかで感じているような、そんな表情だった。  榎木も心のどこかでは、自分の罪を暴いて欲しかったのだ。  ただその気持ちを、受け入れる事が出来なかっただけで……。  あかねの周りに集まり、あかねに注目している事を確認するように、要達を凝視しながら三枝は榎木を部屋の外に連れ出した。  要達は結局わけが分からないまま、あかねは電話を切った。  するとあかねはもの凄い勢いで振り返って、歓喜の叫びを上げた。 「呉野先輩がぁ! 目を覚ましたぁ!」 「本当かよ!?」 「うそ!?」 「マジでぇ!?」 「……良かった」  思い思いに言葉にすると、要達は言葉を飲み込み、パワーを溜め込み、爆発させた。 「ヤッタぁ――!!」  その歓喜はすでに階段を、三階程下りた榎木と三枝の耳にも届き、榎木は心の底でほっとした気持ちを見つけた。  不意に三枝が歩みを止めた。  つられて榎木も止まると振り返った。  ちょうど、三枝の胸の位置で止まり、三枝を見上げる形になった。  その頃、要はある事に気づいてはっとした。 「三枝先輩と榎木先輩は!?」 「え?」    問われたあかねは戸惑いの表情を要に向けた。いつになく要が焦っているのが解ったからだ。要はすばやく辺りを見回すが、二人の姿はない。 「――やばい!」  要は小さく叫んで、急いで部屋を出た。 「ちょ、ちょっと待ってよ!」  その後をあかね達は戸惑いながら追った。  * * *  三枝は、ゆっくりと口を開いた。 「呉野、助かったみたいですね」  そう言った三枝の目に色はなかった。
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